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【内部障害としての慢性腎不全とアート表現の可能性】

◆ 内部障害という「見えない時間」の感覚

慢性腎不全と共に生きる日常には、透析の時間管理、体調の微細な変化、水分制限など、外からは想像しにくいリズムが存在する。この「見えない時間」は、時計では測れない感覚として身体に蓄積される。アートにおいては、繰り返しの線やにじむ色、余白の多い構成として表現されることが多く、静かな反復や抑制された動きが、治療生活の持続性を象徴する。こうした表現は、声高に訴えるのではなく、見る人の感覚にそっと触れる力を持つ。

 

◆ 身体内部のイメージを外へひらく試み

腎臓という臓器は、普段意識されることが少ない存在である。しかし慢性腎不全の当事者にとっては、体内で常に存在感を放つ「もう一つの風景」となる。ある作家は、濾過や循環を思わせる抽象的な記号を重ねることで、血液の流れや体内の緊張を可視化した。こうした作品は、医学的説明とは異なる形で身体理解を深め、鑑賞者に内側からの視点を共有させる。

 

◆ 社会とつながるためのアートの役割

障がい者アートの分野では、個人的な体験が社会的対話へと転換される点が重要である。一般社団法人障がい者アート協会(https://www.borderlessart.or.jp/)では、内部障害を含む多様な表現が紹介され、背景にある生活や思考が丁寧に伝えられている。また、アートの輪(https://artnowa.org/)に掲載されている作品群からも、当事者の静かな語りが社会へ開かれていく過程を読み取ることができる。慢性腎不全のアートは、病名を説明するためではなく、「生き方の一形態」を提示する媒体として機能している。

 

◆ 抑制された色彩が語るもの

慢性疾患をテーマにした作品では、過度に鮮やかな色よりも、落ち着いたトーンや手書き風の線が選ばれることが多い。それは制限の多い生活を否定的に描くためではなく、内省の深さや持続する意志を表すためである。静かな色面に残された微細な揺らぎは、日々の体調変動や感情の波を映し出し、見る人に「分からなさ」を含んだ共感を促す。こうしたアートは、説明しきれない感覚をそのまま差し出すことで、内部障害への理解を更新していく。


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