相談概要
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背景
- 60代・女性。幼少期に股関節脱臼を患い、小学校入学前にリハビリで完治。
- 40〜50歳代頃に股関節の痛みが再発し、障害者手帳4級を取得。
- 7年前(56歳頃)に両股関節に人工関節置換術を受ける。
- 62歳から老齢年金の手続きに伴い、人工関節手術後が障害年金の対象になることを知って申請。
- 直近で障害年金の支給が認められたが、過去に遡っての支給は却下された。
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主な悩み
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なぜ遡及請求が認められないのか
- 幼少期の股関節脱臼や、障害者手帳取得時点で障害認定日とできないか。
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過去に遡って支給される可能性はないか
- 手術後すぐに申請していれば支給されたのではないかと後悔している。
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障害者手帳4級取得時点で支給対象とならなかった理由
- 既に人工関節が必要なほど悪化していた可能性があるが、その頃の書類がない。
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なぜ遡及請求が認められないのか
留意点
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初診日と障害認定日の扱い
- 障害年金では、「初診日から1年6か月後(障害認定日)」の状態がどの等級に当たるかが基準となる。
- 障害者手帳の取得時期と障害年金の認定時期は必ずしも一致しない。
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人工関節手術後の認定基準
- 股関節置換術の場合、術後の状態が一定基準を満たせば3級相当になることが多い。
- ただし、その状態が「障害認定日」にさかのぼって立証できなければ、遡及は認められない。
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障害者手帳4級と障害年金の等級は別基準
- 手帳4級は必ずしも障害年金の3級や2級に該当するわけではない。
- 同じ「障害等級」という名称だが、判定基準は制度ごとに異なる。
回答・アドバイス
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遡及請求が認められない理由
- 多くの場合、障害認定日当時に「人工関節をすでに入れていた」または「3級に該当する明確な証拠」がないと、遡及請求は困難。
- 障害認定日の頃の医療記録や診断書(手帳申請時のもの等)で、実際に3級相当の状態だったことを立証できないと厳しい。
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当時の診断書・カルテの再調査
- 過去に杖などの補助器具が必要だったり、医療機関で「歩行困難」の旨を記録されていた可能性があるかどうかを確認。
- 診断書や検査数値が残っていれば、再度審査請求や再請求の余地が生まれるかもしれない。
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障害者特例の検討
- 65歳前に障害認定されれば、老齢年金よりも有利になる「障害者特例」の制度がある。
- すでに年金事務所から説明があったとのことだが、対象になるかどうかを改めて詳しく確認してみる。
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社労士や年金事務所への追加相談
- 過去の書類や手術当時の状況をさらに詳細に調べたうえで、再度専門家に相談するのがおすすめ。
- 年金事務所や社会保険労務士を通じて、再度審査請求や不服申し立ての可否を検討することも考えられる。
まとめ
本事例では、両変形性股関節症により人工関節置換術を受け、結果的に障害年金の支給が認められたものの、過去にさかのぼった支給(遡及)が却下されたケースです。障害年金の遡及請求を行うには、障害認定日当時の医療記録や診断書で、すでに3級以上の状態であったことを客観的に示す必要があります。障害者手帳4級が発行されていても、その基準だけでは遡及請求には不十分な場合があります。まずは当時の診療記録や書類を調査し、追加で証拠が見つかった際には専門家(社会保険労務士)や年金事務所に再度相談し、不服申し立てや再請求の可能性を探ってみることが大切です。
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